酒造を経営する蔵主でありながら、焼酎を造る杜氏でもあるのは寿福酒造場でも四代目の私が初めてです。飲みやすい減圧蒸留が主流の時代に、うちは原料の風味が生かされる常圧蒸留ひとすじ。常圧は原料の風味をそのまま残すんですよ。だから新米100%は変える気はありません。うちのお客様が求めているのは熟成した味わいですからね。
そして手造りへのこだわり。米や麦を蒸した時の匂いや手触りで「いい焼酎が造れる」と感じる。美味しい焼酎をお客様に飲んでいただけると私も嬉しいですよ。だからこそ、深夜2時、3時にでも心配になって仕込み甕(がめ)の様子を見に行く。手で造るから情が湧くと。機械任せじゃ愛が入らない。その代わり量産やらできんとたい(笑)。
でも、もし、うちが機械任せにしたら、長年のお客様にはすぐに判りますよ。「絹子さん、あんた手造りば止めたね。」って。そりゃもう、お客様は正直。だから私も自分がお客様の立場だったらと思って正直に造るんです。
こんな小さな酒蔵だけど、お客様にはずいぶん励まされてきました。宮崎の日南からわざわざ毎月6本買いに来られるご夫婦がおるっとです。遠いので気の毒だから、「送料はこちらで持つから送りますよ」って言ったら、「絹子さんに会うのが楽しみなんですよ」って。無名の頃から、うちの米焼酎「武者返し」をずっと愛飲してくださっている鹿児島のお医者さんは、学会で上京した際に機内誌で「武者返し」が紹介されているのを見て、「俺の飲んでいた焼酎がやっと認められた」って自分のことのように喜んでくださってね。本当にありがたいですよ、そこまで思ってくださるのって。
そりゃ、焼酎造りやら瓶詰めやらで忙しくて、たまにはゴロンと横になっていたい時があっとですよ。それでも「お客さんですよ」と呼ばれたら、休んでいられんとたい(笑)。でもね、支えてくださる人がいることは大事ですよ。これも人の縁ですけん。
焼酎造りは、そりゃ、半端じゃないキツさですよ。体格のいい30歳の息子でも、息切れしてしまう。それでも、いい原料で愛情を注いで造るのが一番大事やと思うとります。
そして、その評価をするのはお客様です。お客様は鋭いですよ。だからお客様のお一人、お一人が鑑定官だと思って造っています。実際にお客様に飲んでいただいて評価されなくては意味がないでしょ。うちの「作衛門」やらは、高いと言われるけど、20年以上の長期熟成だから高いんですよ。安全、安心が第一、正直に造れば値段は関係なか。気に入っていただけるお客様には分かっていただけるんです。
お客様はファンになってくださると、口コミで伝えてくださる。その応援はすごいですよ。だからお客様を大事にし、その期待に応えないかん。絶対に悪い焼酎は造れんとです。お客様が「美味しい」と言ってくださる焼酎を造るために、樽も徹底して洗いますよ。
私も今年60の還暦。蔵を継ぐ息子がちょうど30歳になり、世代交代の時に来ています。息子も妥協を許さない杜氏に成長してくれました。だから世代交代しても、お客様に想いを馳せて造る手造りの「寿福酒造場」はいつまでも変わりませんよ。



